Topics
UPBEAT Sitter Service_Parent & Sitter Voices1 家庭をベースに、一つひとつの親子を支えていきたい──Kasumiさん

2025年1月に名古屋市で始まった「UPBEAT Sitter Serviece」。国際バカロレア認定校である、UPBEAT International Schoolの新しいシッターサービスで、外国人のシッターによる「英語シッティング」が選択できることを大きな特徴としています。
今回お話を伺うのは、サービスの立ち上げから関わってきたKasumiさん。シッターのひとりとして、また訪問家庭との細やかな調整役を担うコーディネーターとしての、お仕事の内容を聞きました。

1. Sitterで働き始めたきっかけ
もともと保育士として、公立保育園で20年ほど働いていたんです。その後異動して「子育て支援センター」の職員をしたり、「エリア支援保育所事業」といって、地域の子育ての家庭と関わる企画や相談業務に携わったりする仕事を10年ほどするうちに、各家庭をより具体的にサポートしていきたい、と思うようになりました。
子育てをしている人は、本当にさまざまなバックグラウンドを抱えていて、悩みの形もそれぞれです。そして、みなさん一つひとつのことを何とか工夫しながら、日々を過ごされています。私自身、産後の体調が悪い時期にあと一歩で虐待をしそうになるところまで追い詰められた記憶があり、傍に誰かがいること、話を聞いてくれることの重要性を感じてきました。
ただ、自治体の職員としてはなかなか手を差し出しきれない点にもどかしさがありました。支援センターに相談に来ることすらできない方ほど、実はサポートが必要だったりするのに、なかなかそこまでアプローチできない。新たに務めた民間保育園でも地域との関わりを模索していましたが、体調を崩してしまい退職しました。そんな時、たまたまUPBEAT International Schoolのシッターサービスの構想を聞き、地道でも確実に個々の家庭のケアができるのではと考えて、立ち上げから関わるようになりました。
2. 実際の働き方
当初は登録シッターが少なかったので、シッターのひとりとしていろいろなご家庭を担当させてもらっていました。4人きょうだいの賑やかなご家庭を担当することもあれば、外国人シッターと交代で、在留外国人のご家庭に入るケースもありました。
UPBEAT Sitter Servieceの特徴だと思うのは、各家庭のサポートを「チーム」として行っているところ。もちろん訪問は基本的にシッターひとりですが、利用前のファーストインタビューをコーディネーターが行っていて、日々の情報共有もしっかりされています。周辺環境から避難経路、救急箱の位置まで、シッター以外に知っている人が必ずいることは、働く大きな安心感になっていると思います。
登録シッターも増えてきたので、今はそのコーディネーション業務を主に担うようになりました。全体のスケジュール調整や、外国籍の方への公的文書にも対応しますし、一方でシッターの都合がつかないときなどは、私がシッティングに入ることもあります。自分の子育てがひと段落して時間の自由が効きやすい状態なので、あえて他のシッターをサポートしやすい立場に置いていただいています。

3. 印象深かった経験
「ゆっくりお風呂に入りたい」。あるご家庭で、お母さんの発せられた言葉がとても印象に残っています。
そのご家庭は幼いお子さんが複数いらっしゃって、お母さんが苦労されながら一人で育児をされていました。とても自分だけでみきれないけど、他の家族からの支援はなかなか得られない。お子さんの発達に不安もあるなかで、当初は「私と子どもたちと一緒に遊んでほしい」というご要望でした。
ただ、実際私に子どもたちとの関係ができてきたり、一人ひとりの発達をできるだけ丁寧に見てお伝えしたりするうちに、「任せても大丈夫かも」と信頼いただけたのかもしれません。「ちょっとやりたいことがあるんですけど、いいですか……?」と声をかけていただきました。
最初は棚の組み立てでした。ずっと気になっていたけれど、時間がなくてできなかったそうです。「もちろんいいですよ」とお伝えして、実際に出来上がると、とてもすっきりした表情をされて。そこから、「お母さん、やりたいって思うことやっていただいて大丈夫ですからね」とお声がけするなかで、冒頭のお風呂の一言が出てきました。お母さん自身がホッとしたかった、それを叶え支えることができたと思えた瞬間でした。
このご家庭では、そこからお母さんがお子さん一人ずつとゆっくり関わるために利用いただく場面も増えてきています。お母さんが一人だけと集中して遊んだり、特定のお子さんと二人で外出したりできるのも、他のお子さんをシッターがみているからこそ可能なのだと改めて感じています。
4. これからの願い
保育士の仲間にシッターをしていることを伝えると、「ああ、シッターね……」という反応をもらうことが今もあります。日本では職業としてあまり浸透しておらず、保育分野においてどこか下に見ている人もまだいるかもしれません。ただ、シッターという仕事は、子どもが安心する「家庭」にベースを置いて、一対一で大好きな子どもと関わることができる仕事です。保育士として自分が長く経験してきたことを、小さくても確実に生かせていると実感しています。
「東京都ベビーシッター利用支援事業」のように自治体が家庭支援の一つとして力を入れる政策も進められており、その価値や意義を実感している人も増えているはずです。その中で、私自身も働く魅力や楽しさをもっと伝えていき、業界全体の底上げに少しでも貢献できたらと今は考えています。
先日、大学生になった娘が、私の話を聞いて「自分もシッターを使って子育てをしたい」と言ってくれました。そう思える人が増えていくうちに、シッターとして働くこと自体も、選択肢の一つになる人がどんどん出てきたらいいな、と思います。

